「スポーツ界で33億円の縮減に、オリンピアンが抗議アピール」

1日=都内ホテル 抗議会見を行う(右から)山本、冨田、吉田、太田各選手 行政刷新会議の事業仕分けによって、33億円の「民間スポーツ新興費等補助金」を予算縮減とされたスポーツ界を代表して、1日、初めてオリンピアンが抗議のアピールをした。都内のホテルで行われた会見には、女子レスリングで五輪連覇を果たした吉田沙保里(総合警備保障)、北京五輪で銀メダルを獲得し一躍注目を浴びたフェンシングの太田雄貴(森永製菓)、47歳の現役、アーチェリーの山本博(日体大教)ら8人が出席し、五輪などの強化、遠征費に関係する27億円が縮減された場合、どれほどの影響がでるか、またそもそも、自己負担金を支払って競技を続けている現状について苦境を訴えた。スポーツ界のアピールは、ノーベル賞受賞者や大学の研究者、スーパーコンピューター事業に関わる人々が危機感をあわらに抗議したのに比べ、遅くなった感があるが、選手の日程がなかなかとれなかったと、この日になったという。
今回は選手、中でもマイナーといわれる競技団体に所属する選手たちを全面に出したが、今後、JOC(日本オリンピック委員会)の竹田会長ら幹部が2日には文科省、また東京五輪招致では国家保証をスピーチして協力を受けた首相の直談判するたえ官邸を訪問して、先進国の中でも、特に欧米に比して約数分の一程度の予算で強化にあたるトップ選手強化を代表して、予算の確保を陳情する予定だ。また、「選手たちにも、抗議デモをやってもらってもいい。それくらいの気持ちでこの縮減をとめなければ将来の五輪メダルはない」といった危機感を口にするJOC、体協の幹部もいた。
出席者一言
「スポーツは国民の活力」
上村春樹選手強化本部長 選手たちのナマの声を聞いてもらいたい。バンクーバー、夏のロンドン対策を立ち上げ、これをスタートさせている。その中で縮減は死活問題。策ねの北京五輪の際、47億を使った。 過うち27億が国の援助で、あとはJOCと自分たちのお金を足して、選手も自己負担している。今縮減が行われると、ロンドン対策もパーになる。継続、安定的に予算を確保することが大事。諸外国と比べても非常に少ない金額でしかない。TOTO(くじ)を使う強化もあるが、安定的に国策で捻出してもらいたい。スポーツ庁の設置なども御願いしている。子どもから高齢者まで多くの人に夢と感動を与えてきたし、それが国民の活力になっていたはずだ。古橋さんの偉業はその象徴だった。
「仕分けに驚いている」
黒岩敏幸(スピードスケート) (仕分けに)驚いています。季節スポーツは予算、強化は大変です。遠征合宿、世界大会、冬の競技は温暖化の影響もあり、場所の確保は本当に大変です。本当は倍増して欲しいくらいの気持ちだった。見直しして欲しい。スポーツは、医療、福祉に通じる。健康、健全の源であり、この削減で、国の骨格が弱くなってくる可能性もあると思う。夏、冬関係なく予算を増やしてもいいと思う。ボブスレー、リュージュがマイナーで予算をつぎ込む必要があるのか、と指摘されたが、マイナースポーツこそ、日本は力を入れていかねばならないと思う。ここにきているのは予算が厳しいところばかりだが、その中で冬季の中でもこれらの競技を切るという発言は仲間として悲しい。スケルトンの越さんも含め、これだけ頑張っている方々にそういう発言をされたことは憤りを感じました。
「選手を万全で送り出したい」
冨田洋之(体操) 現役時代、負担金を出して遠征に行っていました。コーチも予算で頭を痛めている。そんな中で縮減されては、選手を競技会に送り出すことはできません。選手には満足のいく練習をしてもらって競技会に出て欲しい。感動、夢、希望、本当に大事なものがスポーツにはある。これからもそれを大事にして欲しい。
「日の丸を背負って戦っている」
吉田沙保里(女子レスリング) 海外遠征の負担金はなくなりましたが、そこまではいつも自己負担でした。こずつかいなど両親には本当に迷惑をかけ、減量など体調管理、サプリメントも自分で支払いやっていくしかない。景気が悪くなると、スポンサーも苦しくなる。胸に日の丸をつけ、戦うときには国を背負って戦っている。選手が安心して戦えるようにしてほしい。
「社会時事を考える、クレバーな選手になる機会でもある」
太田雄樹(フェンシング) フェンシングの現状を知って欲しい。北京で銀メダルを取りましたが、各選手がすべて自己負担金で、という強化方針が採られていました。しかし、フルーレの選手たちは不自由なく競技に専念できたが、ほかの種目には申し訳なかった。世界で何名といった五輪出場枠で、これに出るためにナショナルチーム8人は海外を回る費用を親が出してもらうことになる。太田杯というのをこの前初めて開催し、子どもたちにお礼を言われてうれしかった。しかし、本当は、全部が自己負担金というのは将来がないと思う。仕分けを考えることによって、選手たちもスポーツのことを考えるいい機会にもなったのでもっとクレバーになるべきだ。時事ニュースに対して、しっかり社会人としても考え、かかわるアスリートが増えて欲しい。政府のみなさんには、こういうマイナースポーツもあるのだとわかってもらいたい。僕が五輪の表彰台に立つ可能性は2、3%でした。原始人みたいな選手がコーチのおかげで5年かけてメダルを取った。切ってとるのは簡単。ほかの種目であっても、マイナーの切捨てを言われるとまるで自分のことのように思う。
「4歳から五輪を夢みた」
奥村幸大(水泳) 4歳から水泳をはじめ、テレビで流れているオリンピックのメダリストを見て、自分もいつかは、世界で一番になりたい、と思ってきた。両親、祖父、祖母にも金銭面で大きな負担をかけてきた。仕分けは降りかかってくるとは思っていたが、現実になってしまい悲しいです。選手もこうした仕分けの状況に真摯に取り組まないといけないし、メッセージを送りたい。
「マイナーだからこそ、強化費を」
三宅宏実(ウエイトリフティグ) 国際大会や合宿など、支援を頂いている状態で、国際大会への自己負担が増え、遠征はできなくなる。マイナーな競技なので、子育て支援と同じに、スポーツでも夢や希望を考えて欲しい。
「四百㍍リレーの銅メダルの影には」
土江寛裕(陸上コーチ) 4×100メートルリレーは、銅メダルを獲得してくれたが、そこに到達するまでには長期的な強化があったからです。ノーベル賞、各大学の研究者、またスーパーコンピューターのようにすぐに結果ができるものではなく、一度縮減すると、縮減した金額以上のマイナスになる。贅沢をさせてくれ、と御願いしているわけではない。強い代表になるために協力をして頂きたいと御願いしたい。国民の皆さん、どうかスポーツを助けて下さい。
「御願いします」
山崎勇喜(競歩) 陸上の中でもマイナーです。陸連、JOCの強化費が頼りです。今以上のバックアップを御願いします。
「古橋さんの感動を」
入江陵介(水泳) スポーツが大好きで、そこで予算が削減されると聞いて悲しくなった。古橋さんが戦後の日本を明るくしてくれた、と聞いて、改めてスポーツの影響を思った。縮減されれば、メダルの数は減るし、取れるはずのメダルが取れなかったりする。
「妻に自己負担金の請求書を今も見せなくてはならない」
山本博(アーチェリー) 自己負担金の請求書でした。35万円を振り込みましたね。一度夢を追ってたどりついたら、35万円が待っていた。でも諦められないから、練習時間を削ってアルバイトをした。ロス五輪は今度こそ、と思ったら、また自己負担金があった。マイナー競技が多くて、きょうは貧乏アピールみたいになってしまったが(笑)。バルセロナから自己負担金がなくなり、やっと胸を張っていけるんだと思った。いまだ、アーチェリーは自己負担金がある。今年、世界選手権で団体でメダルを獲得したが、それでも韓国までの5万円の負担金がある。家内に、大会が決まると同時に振込み用紙を渡し頭を下げている。こんな人間がいる状況を(民主党は)調べてくれたのだろうか。スポーツは確かに無駄からスタートしたものだ。しかしこの無駄を愛する心をはぐくむことができないものだろうか。形には残らないものにひたむきに努力することを先輩から教わってきた。日本の子どもたちに、形のない財産を育てることのできるようにしてあげたい。日本の将来に影響する問題だ。
(文=増島みどり)





