「日本6試合ぶり失点でカタールにドロー」ー豪州戦は俊輔ら5人離脱 コメント、コラム
「中村俊、長谷部、大久保、本田、遠藤、豪州へ帯同せず」
p>すでに6日のウズベキスタン戦(タシケント、1-0)で南アW杯出場を決めた日本代表は、残る、カタール、アウェーでの豪州戦で連勝を目標に、メンバーを編成した。ボランチの長谷部誠(フォルクスブルグ)が出場停止、遠藤保仁(G大阪)は右太ももの痛みで離脱と2人がベンチを外れ、阿部勇樹(浦和)、橋本英郎(G大阪)のコンビが新しい戦力としての期待とチャンスを背負って先発。
またサイドは、右足首を負傷した長友佑都に代わって同じFC東京の今野泰幸、右サイドは、ウズベキスタン戦当日に発熱で欠場した内田篤人(鹿島)が起用され、トップにはベンチ外となった大久保嘉人(フォルクスブルグ)に代わり、玉田圭司(名古屋)が入った。疲労が心配される中、5人が代わる布陣でカタールを迎え撃った。
前半2分、この試合で、カズ、三浦知良(横浜FC)に並ぶ代表4試合連続ゴールを狙う岡崎慎司(清水)が、中央の中村俊輔から右サイド内田に出されたボールに、DFを連れて猛ダッシュでゴール前へ駆け込むと、DFが焦って判断を間違えこれをオウンゴールにしてしまった。記録は岡崎のゴールではなかったが、いい動きで早くも先制ゴールを奪った。
しかし、カタールの早いプレッシャーに中盤でのパスミスもあり、カタール得意のカウンター攻撃を浴びる場面も連続する。40分過ぎには、ボランチ阿部のミスからカウンターを受け、4対2に持ち込まれるピンチを迎えるが、相手シュートが枠を逸れて何とか凌いだ。前半終了間際には、中村俊の左CKからゴール前に絶好のボールが入り、GKがヘディングを弾いたところに闘莉王が足で押し込んで2点目を決めたかに見えたが、その前に玉田のハンドを取られてノーゴールに。チャンスを決めきれないまま1-0で前半を折り返した。
後半もメンバーは代えずにスタート。前半同様に、日本は高い位置からのプレスをかけながら、攻守の切り替えを早く展開した。しかし後半8分、中澤がフリーになったアジト・ハサンを後方から倒したとしてこれがPKの判定となる。ハサンはこれで右肩を負傷して退場。アリ・アフィフがこれを落ち着いて決めて1-1とされた。
12分、日本は阿部に代わって運動量豊富な松井大輔(サンテティエンヌ)が入る。ここで中村憲がボランチに一列下がり、松井左、中村俊は右とサイドからの切り崩しをはかる。一方カタールはゴール前を厚く固める。しかしペースを奪い返すことはできず興梠慎三(鹿島)と玉田が交代。ファーストタッチでゴール前まで突進するなど勢いを見せ、GKと1対1になるが決め切れなかった。後半36分過ぎ、本田圭佑(VVVフェンロ)が、中村俊に代え、最後のカードを切った。
ロスタイムが4分残されたが、結局最後までゴールを奪えず、この試合、日本は自力でのゴールはなく、また6試合ぶりの失点を受けて、通算でもホーム1勝3分けとなった。豪州はバーレーンに2-0で快勝し、勝ち点2差、最終戦で順位は決まる。
欧州から続けてプレーをしてきた中村俊、大久保、長谷部、本田、ふともも裏の肉離れをした遠藤は豪州には帯同せず、最終戦は19人での戦いとなる。
GK 楢崎正剛
DF2 中澤佑二(cap)
4 田中マルクス闘莉王
15 今野泰幸
6 内田篤人
MF10 中村俊輔(本田圭佑)
7 橋本英郎
14 中村憲剛
5 阿部勇樹(松井大輔) />
FW11 玉田圭司(興梠慎三 )
9 岡崎慎司
(サブ) o都築龍太 山口智 駒野友一 松井大輔 本田圭佑 矢野貴章 興梠慎三
< 「選択肢がなかった」p>
中村俊輔 何人か新しい選手が入って、ぼくも含めてもう少し動けると思った。早い段階で点が入ってペースをつかもうとしすぎたのかもしれない・ホームで勝ちたいという気持ちが強かった。こういう形になって残念。仲間が何よりもきょうはその辺がうまくいかず無駄走りが増えてしまった。無駄な試合はないと思う。僕は行かないかもしれないけれど。連動する前に、ボールを持って動き出すところから動けていなかったことで、個人の技術を使わざるを得なくて自分も含めて凡ミスをしてしまった。みんなできるはずだし、油断もしていない。単純に疲れていたんだけど、でもそういうときだからこそ、あと一歩早く動こうとしなければならない。スペイン対トルコの(予選)でめちゃくちゃ押されていたスペインが最後に勝ったみたいに、自分たちのサッカーができなくても勝たなくてはいけない、と監督も言っていた。個人的にはもっと危険なプレーをしたかったが、きょうは選択肢が自分だけではなくみんなもなかったと思う。ただこの試合、反省はしなくてはいけないし、次につなげなくてはいけないけれど、引き分けがそんなに重要視(悪いという意味)されるかどうか・・・。これからは、W杯に向けて自分との戦い。誰がレギュラーだからといった話ではなく、競争して、全体をレベルアップするのは、クラブでも代表でも同じ。
「受身だった」
阿部 どうしても回されてしまう時間が長くなった。運動量の問題か、前から行くのか、後ろから行くのか中途半端になってしまったことがよくなかった。橋さん(橋本)と話しながらはできたんですが、受身になってしまったいた。
「これだけミスすれば・・・」
橋本 阿部ちゃんのよさを引き出してあげられなかった。きょうは(遠藤の番号)7をつけたのがいやだった(重かったという意味)。自分の思うイメージがあったが、それができず、もらってからの動きが遅くなってしまった。ダイレクトプレーがほとんどできなかった。これだけミスすればこういう試合になる。監督からはいい試合がさせてあげられず申し訳なかった、と言われた。もっとテンポを出したかったが・・。
「全体的にバラバラだった」
中澤 みんな1対1で勝負しようとばかりしていた。いいサポートがなく、全体的にバラバラ。(PKは)あれが世界だったら、ファールの前にちぎられているでしょう。反省している。判定は、アジアではああいうもの。監督もベンチに入れないことで責任感があり、とても悔しかったと思う。最後の試合で、いい形で終りたい。あしたは休みます。
「満足したプレーができなかった」
今野 内容のいい試合をお客さんに見せたかったし、日本の力を見せたかったのでスッキリしない。原因は今分からないが、動きの量も少なかったし、すべてが中途半端だった。前にもいけず、後ろでもがっちり守れず。ミスは消極的なプレーを呼んでしまった。個人的には、もっといいプレー、もっと底上げしていけるプレーをして最終戦を終えたいと思っている。
「難しい試合」
長谷部 上から見ていても、モチベーション的にも難しい試合だったし、シンキングスピードが遅いのが分かった。だからダイレクトがとても少ない試合だった。日程は、むしろカタールのほうが厳しいはずだし、それは言い訳にならない。体力的なことよりも、W杯が決まったことでの難しい試合だったと思う。個人的にはリーグ、W杯と目標を果たせたいいシーズン。しっかり休んで、岡田監督にも言われた「個の力」を鍛えなおしていきたい。
「疲れていたと思う」
大久保 色々な意味で疲れていたんだと思う。でも、新しい選手もいたし、もっと動かないとこれ以上のレベルは厳しくなる。一度離れて九州で休む。岡田監督はロッカーで、自分たちを信じろ、大丈夫だ、と言っていた。
〇・・・犬飼会長は試合後、「予選1位突破にはこだわって欲しい。何でもトップにこわだって。本大会の目標が目標(ベスト4)だからね」と、これで1勝3分だった最終予選を振り返り、最終戦での逆転にはっぱをかけた。この試合、疲労からかシンキングスピードが低下していたことを指摘。また、ウズベキスタン戦の判定を審判部会がビデオをチェックした上、14箇所にわたる誤審があったことを指摘し、その証拠ビデオを抗議文を送ったとした。
(文=増島みどり)
コラム 「遊び、笑い、自由さを」
もっともうまく機能できなかったポジションがあるとすれば、2人ともが入れ替わったボランチだった。前半40分過ぎ、カタールにボールをさらわれ、鋭いカウンターから4対2に持ち込まれる決定的なピンチを招いたのは、阿部のミスだった。
中澤が相手にPKを与えて、代表実に6試合ぶりの失点を受けたシーンもまた、ボランチ・橋本のミスからだった。橋本自身「これだけのミスをすれば、こうなるに決まっている」と深い反省をしていた通り、この試合は、攻守の切り替え、いってみれば代表に常に新鮮な血液を送り出す「ポンプ」としての心臓部であるボランチの具合が悪かったことに寄る。
2人のパフォーマンスが悪いというより、遠藤、長谷部がいかにミスをしないという当たり前の実に困難な仕事を、正確に、絶え間なく繰り返し、フレッシュな血流を生み出していたかを如実に語るものだった。距離感、視野、呼吸、守備力、運動量、パスの強弱といった繊細な仕事まで、歴代の日本代表を含めこのポジションの完成度が試合の出来を大きく左右することが改めて明白なった試合だった。
―真面目すぎて息苦しいー
ボランチの出来が技巧の問題点なら、別の問題も浮き彫りになったように見える。
岡田監督は犬飼会長に「ベンチにいられないことがこれほど苦しいものかと思った」と漏らし、会見でも「初めての経験でそれほど影響はないと思ったが、声で伝えられないことがこんなにもどかしいとは」と心境を吐露した。会場のファンを前にしての挨拶でも、ロッカーでも、「選手の力を出し切ってあげられず申し訳ないことをした」と謝罪している。
監督の真面目さ、実直さは称賛される。素顔はユーモアもある人物だ。しかし、「選手の力を出し切れなくて申し訳ない」といったコメントは、監督不在のベンチを務めたスタッフたち、分業を飛び越えるようなもので、全ての責任を自分自身で抱え込んでいる。一方で、スタッフからも「岡田さん、たまには休んで、お任せ下さいよ」なんて気楽な言葉がなかったことをも示している。バラバラだったのはピッチだけだろうか。
大体、この試合で監督がいなかったから力が出し切れなくて申し訳ない、という結論も無意味で監督が選手に謝罪する意味とは何だろう。「追い詰められて力を発揮するのがこのチームの持ち味」と監督はいつも繰り返すが、追い詰められないと力が発揮できないのではなんとも息苦しい。監督の笑顔など、めったにお目にかかれなくなった。
この日の試合も、ウズベキスタン戦も似ているのは、リズムを変えることができなかった点。ピンと張り続けた糸には釣果はないし、堅い鉛筆はすぐ折れる。ストレート一本勝負では打たれるし、第一その前に肩が壊れてしまう。このチームは、岡田監督の意思がよく浸透したまとまりのあるチームだが、全員が実に真面目で同じ方向を見つめるために、監督の性格そのままにしばしば視野が狭くなる。この試合、モチベーションを言う論評もあるだろう。しかし、モチベーションがないのではなく、常にあり過ぎるから起きる問題もあるのだ。緩急がない。
中村俊が試合後話していたように「みんな(積極的に)行こうと努力しているし、油断なんてしていない」というのは事実だろうし、ファンだってメディアだって分かっている。中村は悪い意味ではなく「(この結果は)自分としてはあまり重要視(悪い)していない・・・」と言った。唯一、肩の力がホッと抜けるコメントだったように思う。アウェーの豪州戦は19人で臨む。突破を決めた最終予選の最終戦で、決して「追い詰められて、乗り越える」なんて構えず、もっと自由に、もっと遊び心をちりばめて、照れ隠しではなく、苦しむからこその人もうらやむ笑顔を見たい。糸は緩め、遊んでいないと、魚は来ない。
(文=増島みどり)





