「東京というヨットは順風に乗って走っている、と思う」ー石原慎太郎都知事 IOC評価委員会視察開始
初日プレゼンテーションを終えての会見から
2016年の五輪招致のために、立候補している4都市を視察するため来日している国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員会(ムータワキル委員長=モロッコ)へのプレゼンテーションが都内ホテルで始まった。評価委に対する最初の公式イベントとなった歓迎セレモニーでは、麻生太郎首相、石原慎太郎都知事らが出席し、13人の評価委に、東京五輪の開催理念とコンセプトなどを説明。プレゼンテーションは終日行われ、テーマ別に具体的な説明を行っていく。あす17日は、現地視察も行われる。これを材料にして評価委員会が作成する報告書が、開催地を決定する際、投票を行うIOC委員の資料になるため、いかにプラスポイントを獲得できるかが重要なカギとなる。
立候補都市ではすでに8日までにシカゴの視察が終了しており、リオデジャネイロ(4月27日)、マドリード(5月4日から)が東京に次いで行われる。
初日は招致委員会が大会のビジョン、コンセプト、輸送、環境および気象などあらかじめ設定されている7つのテーマに関してプレゼンテーションを行い、石原慎太郎東京都知事(招致委員会会長)は、「環境対策による都市再生」「会場配置のコンパクトさ」「1964年東京五輪の遺産の利用」などの特徴をアピールした。
クレー射撃で1976年モントリオール五輪に出場した麻生太郎首相、五輪日本招致推進議員連盟の森喜朗会長、夏・冬五輪に7度出場をした橋本聖子外務副大臣も出席し、麻生首相は「必要な資金は手当てする」と財政的な保証を評価委員会に対して約束した。夜には、プレスセンターが置かれている「六本木ヒルズ」でプレゼンテーションに関するこの日二度目の会見が行われ、石原都知事が「順風に乗っている、と思う」とコメントし、初日にまずはほっとした様子だった。
石原都知事 私はかつてヨットをやっていて、大会の前には非常に緊張したものだ。きょうも最初はなかなか手探りな感じだった。しかし専門家が集まっているのでポイントポイントで具体的な鋭い質問があった。特に、(麻生)総理もきてくれまして、国を代表し、国民を代表し、オリンピックをバックアップしているという姿勢は伝わったと思う。現場を見てもらい、雰囲気をとらえてもらう。限られた数日間で、環境問題、財政力の優劣は数字では分からないだろう。しかしその中で懇切丁寧に説明し、綿密にお答えし高い評価をいただけたと思う。ランチョン(昼食会)を通じて、ざっくばらんの会話も出来た。今は東京というヨットは順風に乗って走っている、と思います。
「私たちは国連ではないので・・・」
午後6時半から六本木ヒルズ49階のアカデミーで行われた記者会見の「主旨」は、IOC評価委員会へのプレゼンテーションの内容、或いは評価委員会からどんな質問があったかを、その席には入れない記者たちに説明(ブリーフィング)するものとなるはずだった。しかし、この記者会見で、今回のIOC評価委員会のスタンスと、それを受け入れた東京招致委員会の「温度差」がかいま見えたようだった。
最初に海外メディアからの質問を、司会者がさえぎってしまった。司会を務めたのはメーカーから出向している語学堪能な人物だが、質疑応答に入った最初の質問に外国メディアから、「韓国では、(石原都知事の)韓国統治に対する歴史的な認識から五輪開催にはふさわしくない、といった声もあるようだがどう思うか」との質問が出されると、「この場は、オリンピックに関する質問に限っている。時間もない」と、最初の質問にもかかわらず早くも時間がない?、とさえぎった。質問自体に「政治的な表現を変えて欲しい」とまで注文を出したため、もちろん記者は「理解できない」と納得せず、「なぜ政治的なのか」と食い下がり、結局、レシーバーの不都合で石原都知事に訳されておらず、最初からやり直し。都知事は、恐らく通常この種の質問に答えるよりもかなりトーンを落として「日本統治が良かったなどといったことは一度もない」とし、特にそれ以上の質問は出なかった。
政治的な質問だ、とさえぎるのでは、まるで「何か言ってしまうかもしれない石原都知事に、その質問はナーバスだから止めて欲しい」とわざわざお知らせしているようだ。
出鼻からどこかちぐはぐな会見は、環境問題に関する長い、長い記者たちへの「プレゼンテーション」と強いアピールでまたブリーフィングからはずれ、途中、会場内で携帯電話を使う関係者がいるかと思えば、「理念が壮大過ぎて焦点がボケていないか?」と海外メディアに質問されるなど、結局1時間以上をかけて終った。事務的に、簡潔に報告を行えばいいものをわざわざ、色々と配慮して詰め込みすぎ、焦点が散漫になってしまったように見える。
この日のプレゼンテーションで、環境問題とその改善について具体的な数値を示すなどして招致委員会が環境にいかに配慮したかを説明した際、評価委員のフェリ氏が「私たちは国連ではないのでそこまで目標にされても・・・」答えたという。東京の環境への取り組み、五輪における環境への斬新なアイディアについて反論はないだろう。ムタワキル女史と国際陸連の女子委員会でともに委員を務めている有森裕子氏や、吉田沙保里(レスリング)らをプレゼンテーションに出席させオリンピアンを尊重したプレゼンテーションも好評のはずだ。肩にパンパンに力を込めず、実力は、さり気なく、自然体で示せばいいと思う。
(文=増島みどり)





