竹下百合子選手(カヌー)
2007年最後のロングインタビューで取材をした若きアスリートを紹介し、今年の「セブンアイ」を締めくくろう。
カヌー競技のスラロームで久々にオリンピック出場を決めた竹下百合子(早大)と待ち合わせたのは、青梅の御岳渓谷の川岸。この日の気温は5度。わずかにかかる水しぶきだけでも、凍えるような冷たさの昼だった。今年9月、ブラジルで行われた世界選手権で出場枠をぎりぎりの15番目で獲得した。16位の選手との差は、わずか100分の1秒だったというから、彼女の渾身のパドルひと漕ぎが北京を決めたことになる。

しかし、彼女の五輪出場を伝えた新聞記事はわずか数行だった。比べるものでは全くないが、女子競技が男子をしのぐ勢いの中で注目されている時代、しっかりと芯の通った、それでいてとてもチャーミングな女子大生のことを、少しでも知ってもらいたいと願う。
「今となっては……」
まだ車の免許も持っていない19歳は、はにかんで笑う。
「マイナー競技だからこそのやりがいを感じています。オリンピック出場を決めてからたくさんの人が声をかけ、注目してくださる。オリンピック出場と同じ喜びでした」
スラロームは旗門に接触したり、不通過の場合ペナルティが科せられる。どんな流れでも、難しさに投げ出したくなるよう旗門でも、何度でも粘って通過しなくてはならない神経戦でもある。御岳で育ち小学校2年から父の手ほどきでカヌーを漕いできたベテランは、「だからおもしろい」と言う。何ヶ月もの欧州遠征を仲間とこなし、氷点下の中でも連日、朝夕とカヌーに乗る。取材の日も、素足にサンダル姿でカヌーをかついで、また上流へと歩いていく。19歳なのに、その姿はじつに堂々としていて、迫力があって、渓流の夕日にたくましいシルエットを映していた。

ちょうどクリスマスの頃だった。お化粧やショッピング、デートに忙しいはずの、彼女と同い歳の女の子たちならどんなイブを過ごすかなと想像した。羨ましいなんて思わないのだろうか。
「確かに全然違います。でも、小さくても大きくても、自分の目標を追える幸せって、どれほど充実しているかと思いますから」
北京五輪の来年、こんな清々しい言葉を忘れず取材をしたいと思う。もう6回目の夏季五輪取材だなんて、目まいがしそうだが。
(文=増島みどり 写真=Kimimasa Mayama / MPictures)





