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「東芝、処分後初の試合で61-5で大勝」ラグビートップリーグ

1月 12 日, 2009 年, 6:43 pm

 「ひとつになれた気がした」ー東芝・広瀬主将

 ラグビートップリーグ第12節で、「府中ダービー」となるサントリー・サンゴリアスと東芝ブレイブルーパスが対戦し(味の素スタジアム、観衆7783人)、部員のタクシーでの窃盗事件で処分を受けた東芝が、前半だけで5トライ(4ゴール)、後半4トライ(4ゴール)と猛攻を見せ、リーグ戦3位のライバル、サンゴリアスを61対5(33-0、後半28-5)で圧倒した。
 リーグ2位の東芝は、4日に起きた事件後、部員は退部、指揮を執ってきた瀬川智広監督が今季終了までの謹慎(和田賢一コーチが代行に)となり、青木部長が辞任をするなど厳しい処分を決め、ラグビー部の活動は続行することとした。
 事件が発覚し処分が下されてから初の公式戦となったこの日、約8千人のファンがダービーに足を運んだ。東芝は立ち上がりから攻撃的なプレーでボールを支配し、10分から7分間で怒涛の4トライと、サントリーを受身に立たせた。
 後半になって東芝のFWベイツ、TBロアマヌ2人が交互に一時退場処分(10分間)となる数的不利に立たされながらも、その間、守らずさらにトライを奪うなど最後まで積極的な姿勢を崩さず、両チームの対戦としては過去もっとも点差の開く完勝。トップリーグ4チームによる「マイクロソフトカップ」制覇に弾みをつけ、現在トップの三洋電機との最終節(18日)で、逆転でのリーグ戦1位通過に可能性を残した。
 サントリーはすでにマイクロソフトカップに駒を進めており、故障者も続出する中、東芝の気迫がこもったラグビーに巻き込まれた格好となった。
 和田監督代行は試合後の会見冒頭、「今回の件で、皆さんにご迷惑をおかけしたことを心からお詫びいたします。そんな中でこらだけ多くの方々に試合を見て頂いたことを心から感謝します」と頭を下げた。
 
 東芝・広瀬俊朗主将 プレーができるかどうかも分からないような事件を起してしまい、ラグビー界、ファン、メディアの皆様に本当に申し訳なく思っています。スタジアムに入ったとき、東芝のファンがたくさん居るのを見て感謝したかったし、その気持ちに絶対に応えたかった。今回の件が起きて、自分たちはどうすべきか、ちょっとしたことでおかしくなっていたんではないのか、と選手だけで2時間のミーティングを持った。もう一度、東芝のラグビーを見せて、感謝、お詫びをしようと、ひとつになったと思う。サントリー戦とか、マイクロソフトカップでの対戦とか、そういうことを考えずに、ただきょうの試合のみ、凄く大事な一試合だと集中した。

   コラム  「何かあってからでは遅いけれど・・・」

 日曜日、東伏見でアイスホッケーのアジアリーグを取材しようと電車に乗ったが、事故で運転再開の見込みは立たないという。何も起きないに越したことはない。しかし何か起きたとき、習慣に流される日々には意識しない考え方や発見がある。
 降りようと立ち上がると、車内に車椅子のご老人が見えた。乗車と降車は付き添いがいるが、駅員は事故対応に追われ走り回っている。聞くと、この駅で降りてタクシーに乗り換えたいが、と困惑している。別の男性も気付き、エッ、エレベーターが動かないの?、じゃあ、と車椅子ごと階段を昇降し、ご老人をタクシーに乗せた。こんなことでもなければ、車椅子の視線には全く気付かなかった。「普段は今の若者は冷たいなんて言っていましたが間違いでした。本当に感謝します」
 ご老人にそう言われた。

 そういえば、年明けから取材しているスポーツでも、何か起きて湧いた力が「鍵」のように思う。箱根駅伝で初優勝を遂げた東洋大のメンバーたちは、同じ部員の強制わいせつ事件のために出場を断念しかけた。様々な事情で出場を認められた後、練習量も調整も、本当なら大きく崩れたはずの選手たちがむしろ強くなっていた。「何か起きて気付くのでは遅いのですが、自分たちがいかに恵まれ、支えられているか、初めて実感しました」と、若い選手が心から口にした姿が印象に残る。

 やっと到着したリンクでは、廃部が決まった名門「西武プリンスラビッツ」のホームゲームに、今季最多となる2811人のファンが詰めかけ、王子に4-3で勝利した。廃部を聞いて居ても立ってもいられず駆けつけた人もいるだろうし、選手はいつも以上にサインや撮影に丁寧に応じ、大きな輪が広がっていた。若林クリス監督は「1秒1秒、アイスホッケーとファンに感謝してやる」と唇をかんで優勝を誓った。

 12日、ライバルサントリー相手に完勝した東芝・広瀬主将は、こんなことで言うのはいいことではないが、と前置きした上で「今回の件でひとつになれたと思った。全員で2時間、自分たちのちょっとしたことがおかしくなってたんじゃないか、と話し合いをした」と、チームメイトの気持ちを代表した。試合中には、2度の一時退場で数的不利を背負ったが、その間にもトライをあげ、「一人足りなければ普通は守る。でも全員が、一人いないことなんて忘れてしまっていたくらい攻撃的に行くことができた」(広瀬)と底力も見せた。
 何も起きないにこしたことはない。しかし、仲間が大きな問題を引き起こし、ある覚悟をしたとき、スポーツの本質を改めて知ることもあるのだろうか。年明けのスポーツ界は、「何かあったとき」にスポーツマンが何をどう試されるのか、グラウンドやスタジアム以外の場所で、それを見つめ直す力が競技力同様問われているようだ。
 何か起きて気付くのでは遅い。何もないに越したことはない。けれども、「何か」が起きてこそ分かる、大切なこともあるのだろうか。

(12日付け、東京中日スポーツ セブンデイズに加筆 文=増島みどり)

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